「ひはつ」


「ひはつ」とは我が家で産まれ 1年半ずっと見続けたキツネの名前です。
「ひはつ」という言葉は方言で育ちの遅い子 未発達な子を意味した昔の言葉です。
2007年の春に1組のキツネの夫婦がやってきて5月に3匹の子供を産みました。それはかわいい子キツネで毎日飛び跳ねて遊んでいました。
 お父さんキツネ
お母さんキツネ
子ギツネ
子ギツネ
そして8月
3匹は元気に巣立って行きました。
その年はとても暑い夏で・・・・・
水浴びをするスズメ
バテバテの愛犬プウコ
ある日 1匹の子ギツネが疥癬(ダニによる皮膚病で死に至る病気)にかかり やせ細って帰ってきました。
これが「ひはつ」です。
目もよく見えない様子 今にも死にそうです。
その日から餌と薬を与えました。
次第に元気を取り戻し 毛並みも少しずつ生えそろい 目も見えるようになりました。

雪の上で遊ぶ ひはつ
のら猫と餌の奪い合い
2008年 春

そしてまた1組のキツネの夫婦がやってきました。
そして 今度は6匹も子供を産んだのです。


ある暖かい日
ひはつ と子ギツネが遭いました。

ひはつ はびっくり
子ギツネたちはお母さんとも違う臭いの ひはつ に興味津々
でも不思議!
ひはつ には懐かしい臭いだったのです。
その日から ひはつ には楽しく忙しい毎日に変わりました。
ひはつ に甘える子ギツネ





なんと ひはつ と子ギツネたちは1つ違いの兄弟だったのです。
お母さんキツネが餌を探しにいく間 ひはつ は子ギツネたちの子守です。
「ほらみて お母さんが捕ってきてくれたよ。お兄ちゃんにもあげるね」
ちゃんと餌も分けてくれました。
こんな楽しい生活も子ギツネたちの巣立ちが近づき 終わりを迎えました。
やがて 子ギツネたちはどこかへ巣立って行きました。ひとりぽっちの寂しさに慣れるまでしばらく時間がかかりました。
やっと ひはつ もひとりの生活に慣れ、すっかり立派なキツネになりました。あとはお嫁さんを見つけて・・・ネ



ところが3匹の子ギツネが帰ってきたのです。立派な大人のキツネになって・・・
それは何かが起こる前兆でした。


そしてこの日から ひはつ は夜しか出てこなくなりました。

そして
11月
大けがをしてうずくまっている ひはつ の姿がありました。子ギツネとけんかをしたようです。


その痛々しい姿に愛犬のプウコも声が出ません。そっと見つめるだけ・・・

そして ひはつ は独り死んでしまいました。今でも子ギツネやタヌキなどがやってきます。
でも もう ひはつ にはあえません。  
 我が家で産まれたとはいえ 野生動物の一生に係わったことが ひはつ にとって幸せだったかどうかわかりません。
 その ひはつ の死を看取れたことで係わった責任を果たせたような気がします。
この記録を劣悪な環境のもとでもけなげに生き抜いた動物たちに捧げたいと思います。
人間の身近にやってきた野生動物たちに手助けをすることへの疑問としないではいられない思いを問いかけながら。

 この本は星雲社から「ひはつ」(あるキツネの記録)998円で出ています。
アマゾンでも購入可能です。是非 読んでみてください